院長ブログ

2014年2月23日 日曜日

閉塞性睡眠時無呼吸症は心臓突然死のリスク因子である

米国において主な死因となる心臓突然死が問題となっている。閉塞性睡眠時無呼吸症は、虚血性心疾患、大動脈解離などの心血管系疾患や不整脈と関係があることが言われているが、心臓突然死との関連性はいまだ明らかになっていない。
Gamiらは、終夜睡眠ポリソムノグラム検査を行った10,710人を前向きに観察し、無呼吸症の重症度と心臓突然死の頻度を検討した。平均5.3年の観察期間で年間0.27%の心臓突然死を認めた。多変量解析において、心臓突然死の独立した因子は、高齢、高血圧の既往、冠動脈疾患、心筋症または心不全、心室性不整脈の存在、そして夜間の低酸素の程度があげられた。心臓突然死のリスクは、無呼吸低呼吸指数(AHI)>20、平均の夜間低酸素<93%、最低酸素濃度<78%で高かった。

ゆみのコメント:
前向き研究にて睡眠時無呼吸症の病態生理の特徴でもある夜間の低酸素血症が心臓突然死と関連性があることを示した最初の報告である。米国の研究によると、心臓突然死の原因は、虚血性心疾患、大動脈解離、不整脈、心不全の順番の頻度にあることが報告されている。また睡眠時無呼吸症は、これらの疾患の原因にもなり得ることが多くの研究で報告されている。このため、睡眠時無呼吸症の存在は、心臓突然死の原因の上流にある可能性をもつ。夜間の繰り返す低酸素、深い睡眠への妨げとなる睡眠時無呼吸症はいびきや日中の眠気を及ぼす単なる症候群ではなく、心血管系疾患を介して、命にも関わりをもつ病気であることを考慮する必要がある。

引用文献:Gami AS et al. Obstructive sleep apnea and the risk of sudden cardiac death: a longitudinal study of 10,701 adults. J Am Coll Cardiol. 2013;62:610-6.

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2014年2月16日 日曜日

高齢者女性の認知機能低下に睡眠時無呼吸が関係する

夜間の繰り返す低酸素や睡眠からの脳波上の覚醒反応が、高齢者における認知機能低下と関係しているかどうかは明らかではなかった。
Yaffeらは、認知症のない298人の高齢者女性(平均82歳)に終夜睡眠ポリソムノグラム検査を行い、無呼吸低呼吸指数(AHI)15以上を無呼吸症と診断したところ、105人(35%)が無呼吸症を持っていた。これらの患者を約5年間観察し、どのような症例が認知機能低下と関連しているかを検討した。結果は、無呼吸症がない群は31%、無呼吸症のあった群は45%で認知症に発展した。そして認知症になるリスクを多変量解析で検討したところ、夜間の低酸素や無呼吸低呼吸の頻度が高いほど認知機能低下に発展しやすかった。

ゆみのコメント:
高齢者女性において、夜間の繰り返す無呼吸が認知機能低下のリスクとなることが明らかになった。本研究により、高齢者の睡眠時無呼吸症への継続治療の必要性において、ひとつの重要な意義を示すことができる。しかしながら、本研究は女性を対象としており、男性においてはいまだ明らかではない。また睡眠時無呼吸症への治療介入により、認知機能低下の予防となるかは明らかではない。このため、睡眠時無呼吸症と認知症の関係について、今後の更なる研究が必要である。
この研究結果から、超高齢社会をむかえた本邦において、高齢者の認知症の一次予防として、睡眠時無呼吸症の存在を念頭おきながら、一般診療を行うことも必要と考える。

引用文献:Yaffe K et al. Sleep disordered breathing, hypoxia, and risk of mild cognitive impairment and dementia in older women. JAMA. 2011; 306: 613-9

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2014年2月 9日 日曜日

SAS患者のメタボリックシンドロームへのCPAPの効果

睡眠時無呼吸症はメタボリックシンドロームと関係があることが言われている。しかしながら、そのCPAPへの効果はいまだ明らかになっていない。
Sharmaらは、3か月間のCPAP群とコントロール群の血圧や脂質、血糖、メタボリックシンドロームへの効果を検討した。86人の睡眠時無呼吸症患者のうち、75人(87%)がメタボリックシンドロームを持っていた。3カ月のCPAP治療により、肥満度は軽度の低下(-0.37kg)にも関わらず、収縮期血圧が3.9mmHg低下、LDLコレステロール9.6mg/dl低下、中性脂肪18.7mg/dl低下、HbA1c 0.2%低下、メタボリックシンドロームは11/86(13%)の人が改善を認めた。また皮下脂肪や内臓脂肪に関しても有意な改善を認めた。

ゆみのコメント:
睡眠時無呼吸症への3カ月のCPAP治療により、血圧や皮下脂肪、メタボリック症候群の改善を認めた。この結果は、睡眠時無呼吸症自体が血圧や脂質、メタボリック症候群のひとつの原因となる可能性を示す。しかしながら、本研究はインド人、平均BMI 33と超肥満症例を対象としており、肥満度の低い日本人の睡眠時無呼吸症患者への効果はいまだ明らかではない。 
この研究結果は睡眠時無呼吸症患者全員にあてはまるものではないが、臨床医として夜間のいびき、無呼吸の存在を考え、高血圧やメタボリック症候群をもつ患者へ、降圧剤やスタチンなどの薬物治療だけでなく多角的なアプローチが必要と考える。

引用文献:Sharma SK et al. CPAP for the Metabolic Syndrome in Patients with Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med 2011;365:2277-86.

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2014年2月 2日 日曜日

子供の睡眠時無呼吸へのアデノイド摘出手術の効果

就学期の子供のいびき、睡眠時無呼吸症の原因の多くはアデノイドにあり、その治療にアデノイド口蓋扁桃摘出手術が行われている。しかしながら、その有効性についてはいまだ明らかになっていない。
Marcusらは、睡眠時無呼吸症をもつ5-9歳の就学期の子供464人を対象に、早期の手術治療群と同治療待機群を無作為に分け、7か月後の実行機能(注意や行動を制御する能力)や生活の質、また無呼吸の重症度の変化について検討した。実行機能については両群間で有意な差がなかったが、認知機能、生活の質や睡眠時無呼吸症の重症度は、早期の外科的治療群が治療待機群と比べて有意な改善を認めた。また肥満群は非肥満群と比べて同等の治療効果を認めた。尚、7か月間の観察において、無呼吸症の重症度は外科治療群で76%、治療待機群では46%の子供で改善を認めている。

ゆみのコメント: 
子供の無呼吸症は、睡眠中の成長ホルモン分泌低下から身体面や精神面での発達の遅れを認め、また集中力が低下しているため学習意欲の低下などを起こすことがあります。
いびきや無呼吸を認め、身体面や精神面の著しい低下を認める子供にはこれまでどおり積極的な摘出手術を考慮しても良いと考えるが、本研究の観察期間7カ月において、約半数が自然経過にて無呼吸症の軽快を認め、また同手術により実行機能という点においては明らかな改善を認めていないことからも、客観的に日常生活に支障がないと考えられる子供へのアデノイド摘出術は、慎重に検討する必要があります。

引用文献:Marcus CL et al. A Randomized Trial of Adenotonsillectomy for Childhood Sleep Apnea. N Engl J Med. 2013; 368: 2366-2376

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