院長ブログ

2014年1月26日 日曜日

睡眠時無呼吸症を合併している心不全へのASVの効果

心不全患者の約半数に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(CSA)が併存している。在宅人工呼吸機器であるASVは、CSAへの効果はこれまでの研究で示されていたが、OSAとCSAが併存する無呼吸に対しての効果はまだ明らかになっていない。
Randerathらは、OSAとCSAが併存する17人の心不全患者に対して、CPAPとASV (BiPAP autoSV)を12か月間使用して、心不全の状態を比較検討した。ASVはCPAPと比較して、有意にCSAおよびBNPを低下させた。CPAPとASVは、息切れや疲労の自覚症状を改善させたが、両群間では有意な違いを認めなかった。尚、両群間で夜間に4時間以上している割合は有意な違いは認めなかった(CPAP, 4.3 ± 2.3 h/d; ASV, 5.2 ± 2.0 h/d)。
 
ゆみのコメント:
心不全の多角的治療のひとつとして、増悪因子である無呼吸症への積極的な治療介入を行い、長期観察を行った研究である。陽圧呼吸であるCPAPおよびASVは、心不全に良い効果をもたらす。問題となるのは、これらの治療がどれだけ睡眠中に継続使用ができるかである。
CPAPに比較して、ASVは呼吸に合わせた陽圧呼吸を行うことにより、呼吸の不安定性の是正、治療の継続率が高いことが、心不全への良い影響をもたらしていると考える。

引用文献:Randerath WJ et al. Long-term auto-servoventilation or constant positive pressure in heart failure and coexisting central with obstructive sleep apnea. Chest. 2012;142:440-7. 

投稿者 ゆみのハートクリニック | 記事URL

2014年1月19日 日曜日

心不全患者における睡眠時無呼吸の心拍出量への影響

睡眠時無呼吸症には、上気道を閉塞する閉塞型睡眠時無呼吸と脳から中枢性に呼吸を停止させる中枢型睡眠時無呼吸の2つのタイプがある。
閉塞型パターンは胸腔内圧の変動をきたし、心臓に負担をかけやすい状況になるが、中枢型パターンは胸腔内圧の変動がないため、心臓には直接的な影響を及ぼさない可能性をもつ。しかしながら、これらを直接的に示した研究はこれまでない。
Yuminoらは、40人の夜間の睡眠ポリソムノグラム検査と同時に非侵襲的心拍出量モニタリングを行い、400回の無呼吸パターンの心拍出量の変化を検討した。その結果、閉塞型パターンは無呼吸中に心拍出量が平均6.8%低下し、一方で中枢型パターンは平均2.6%増加していた。また閉塞型パターンの無呼吸において、どのような患者に心拍出量がより低くなるかを多変量解析にて検討したところ、左室駆出率が低下している症例、無呼吸時間が長い症例、また無呼吸により酸素濃度が低下している症例であることが分かった。

ゆみのコメント:
心不全患者において、上気道が閉塞する閉塞型睡眠時無呼吸が心拍出量を低下させることをヒトで直接的に示したはじめての研究である。この研究結果は、心不全に合併した睡眠時無呼吸への治療意義を示し、また特にどのような患者へ積極的に陽圧呼吸療法の治療導入、そして継続させるかを示す有意義な研究と考える。

引用文献:Yumino D et al. Differing effects of obstructive and central sleep apneas on stroke volume in patients with heart failure. Am J Respir Crit Care Med. 2013;187:433-8

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