院長ブログ

2015年5月25日 月曜日

冠動脈バイパス術後の予後と閉塞性睡眠時無呼吸症

閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は心血管系イベントと関連している。Uchoa CHらは、冠動脈バイパス(CABG)後の患者において、OSAが脳心血管イベントに及ぼす影響を検討した。CABGが予定されている67人の患者に、術前検査として終夜睡眠検査を行い、一時間あたりの無呼吸低呼吸回数(AHI)が15回以上のOSA患者は56%であった。脳心血管イベントに関して、OSAの有無で、1ヶ月以内では有意差がなかったが、長期観察では、脳心血管イベント、血行再建術の追加治療、狭心症や心房細動の出現はOSA群でより多くみられた。また多変量解析において、OSAの存在は冠動脈バイパス術後の独立した予後不良因子であった。

ゆみのコメント: 虚血性心疾患により冠動脈バイパス術が必要になった患者において、OSAの存在が独立した予後不良因子であったことを統計学的に示した論文である。 以前にわたしたちは、心筋梗塞で冠動脈ステント留置術を行った患者においてOSAの存在は、その後の心血管イベントが多いことを示している(Yumino D et al. Impact of obstructive sleep apnea on clinical and angiographic outcomes following percutaneous coronary intervention in patients with acute coronary syndrome. Am J Cardiol. 2007;99:26-30)。このように、すでに狭心症や心筋梗塞を起こしたあとの患者においても、OSAをもつことは、さらに次のイベントを起こす可能性がある。このため、医療に携わる我々は、まずは夜間の無呼吸の有無をみるスクリーニング検査を行う意識をもち、二次予防を考慮する必要がある。

引用文献:Uchôa CH et al. Impact of OSA on Cardiovascular Events After Coronary Artery Bypass Surgery. Chest 2015;147:1352-60.

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2015年5月18日 月曜日

閉塞性睡眠時無呼吸症への上気道刺激の効果

閉塞性睡眠時無呼吸症への持続陽圧呼吸療法(CPAP)は使用継続不良な患者が問題となる。Strolllo PJらは、上気道への電気刺激により睡眠中の無呼吸を治療する新しいデバイスを用いて、12ヶ月間の上気道刺激治療を行い、安全性と効果を検討した。126人に外科的に上気道開大筋を支配する神経へリードを留置し、ペースメーカーデバイスは前胸部へ留置を行った。安全性について、重度の合併症は2%未満であった。同治療を12ヶ月間の継続使用により、1時間あたりの無呼吸低呼吸指数(AHI)は29から9へ減少した。またそれに伴い、日中の眠気や睡眠の質の改善を認めた。

ゆみのコメント:
中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症患者において、CPAP治療の継続率は6ヶ月で約70-80%が現状である。 この中でCPAP離脱症例への有効な治療方法がないのが現状である。最近、欧米において、上気道開大筋群を支配する舌下神経へのペースメーカーリードを用いた電気刺激を行い、睡眠中の上気道閉塞による無呼吸を抑える新しい治療方法の臨床試験が行われている。本研究では、多施設の良好な試験デザインにて、その安全性と有効性を示したはじめての報告となった。本邦でもCPAP以外の無呼吸症治療を望む患者が多くいる。本治療方法は外科的な方法を必要とするが安全性が示されるのであれば、本邦でも使用可能なときがくることが望まれる。

引用文: Strollo PJ Jr et al. Upper-airway stimulation for obstructive sleep apnea. N Engl J Med. 2014;370:139-49.

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2015年5月 7日 木曜日

閉塞型睡眠時無呼吸に対するCPAPと体重減量の有効性

肥満と閉塞型睡眠時無呼吸は高率に併存し、両者には炎症や生活習慣病が介在する。Chirinos JAらは、中等度から重度の閉塞型睡眠時無呼吸をもつ181人の肥満患者を対象とし、CPAP単独、体重減量単独、CPAP+体重減量の3群で、24週間の無作為介入試験を行った。 CPAPや体重減量の単独介入群と比較して、CPAP+体重減量介入群で、インスリン抵抗性、中性脂肪、血圧の軽快傾向を認めた。

ゆみのコメント:
肥満を合併した睡眠時無呼吸症患者において、CPAP治療だけでなく、体重減量も介入することが、生活習慣病の軽快に有効であることを示した報告である。睡眠時無呼吸症患者はCPAP治療を導入することにより、体重減少には主眼が置かれず、生活習慣病に関しては放置または薬物治療にて経過観察されがちである。本研究において、CPAP治療のみではなく、体重減量も行うことが、本来の睡眠時無呼吸症の治療目的でもある動脈硬化危険因子の管理に有効であるということが明らかになった。定期通院するCPAP治療患者において、看護師や検査技師による生活習慣管理に対する患者教育を後押しする臨床上有用なエビデンスといえる。

引用文献:Chirinos JA et al. CPAP, weight loss, or both for obstructive sleep apnea. N Engl J Med. 2014;370:2265-75

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