院長ブログ

2015年5月 7日 木曜日

閉塞型睡眠時無呼吸に対するCPAPと体重減量の有効性

肥満と閉塞型睡眠時無呼吸は高率に併存し、両者には炎症や生活習慣病が介在する。Chirinos JAらは、中等度から重度の閉塞型睡眠時無呼吸をもつ181人の肥満患者を対象とし、CPAP単独、体重減量単独、CPAP+体重減量の3群で、24週間の無作為介入試験を行った。 CPAPや体重減量の単独介入群と比較して、CPAP+体重減量介入群で、インスリン抵抗性、中性脂肪、血圧の軽快傾向を認めた。

ゆみのコメント:
肥満を合併した睡眠時無呼吸症患者において、CPAP治療だけでなく、体重減量も介入することが、生活習慣病の軽快に有効であることを示した報告である。睡眠時無呼吸症患者はCPAP治療を導入することにより、体重減少には主眼が置かれず、生活習慣病に関しては放置または薬物治療にて経過観察されがちである。本研究において、CPAP治療のみではなく、体重減量も行うことが、本来の睡眠時無呼吸症の治療目的でもある動脈硬化危険因子の管理に有効であるということが明らかになった。定期通院するCPAP治療患者において、看護師や検査技師による生活習慣管理に対する患者教育を後押しする臨床上有用なエビデンスといえる。

引用文献:Chirinos JA et al. CPAP, weight loss, or both for obstructive sleep apnea. N Engl J Med. 2014;370:2265-75

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2015年2月12日 木曜日

ペースメーカー機能で重症睡眠時無呼吸症がわかる

睡眠時無呼吸症は心血管系疾患と関連し、またペースメーカー植込み患者には多く存在することが報告されている。Defayeらは、ペースメーカー機能にある胸腔インピーダンスセンサー(SAM algorithm, SAM-RDI)を用いて、重症の睡眠時無呼吸症の同定が可能かを検討した。40人のペースメーカー患者のうち、一時間あたりの無呼吸低呼吸指数(AHI)30以上の重症無呼吸症患者が56%と高率に存在していた。重症の無呼吸症は、SAM-RDI20をカットオフポイントして同定することができ、その感度85%、陽性的中率89%、特異度85%であった。

ゆみのコメント:
本研究は、ペースメーカー機能を用いて、非侵襲的に重度の睡眠時無呼吸症のスクリーニングが可能であることを報告した研究である。終夜睡眠検査ではペースメーカー植込み患者の半数以上と高率に重度の無呼吸症患者がみられ、また胸腔インピーダンスを用いた無呼吸のアルゴリズムにてこれらの患者を効率良く同定できた。 睡眠時無呼吸症は発作性心房細動や脳梗塞、心血管系疾患の発症と関連があることは周知のとおりであり、ペースメーカー植込み症例に限定しているが、氷山の一角ではなく、全体をみるに適した非侵襲的スクリニーニングツールを証明することは臨床上意義のある研究である。またペースメーカーという経時的な評価方法を用いて、日内、日間の無呼吸症と心血管系疾患の関連性について、今後の新しい研究報告が待たれる。

引用文献:Defaye P, et al : A pacemaker transthoracic impedance sensor with an advanced algorithm to identify severe sleep apnea: the DREAM European study. Heart Rhythm. 2014;11:842-8

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2015年2月 6日 金曜日

治療抵抗性高血圧患者における睡眠時無呼吸症の割合

降圧剤を用いても血圧コントロール不良な治療抵抗性高血圧は睡眠時無呼吸症(OSA)との関連性をもつことが言われている。本研究の目的は治療抵抗性高血圧患者の大規模コホート研究において、OSAの割合や関連因子を検討することにある。422人の治療抵抗性高血圧患者のうち、無呼吸低呼吸指数(AHI)>5以上のOSA患者は82%、またAHI>15の中等度以上のOSA患者は55%であった。多変量解析にて、治療抵抗性高血圧患者において、高齢、肥満、男性、糖尿病の存在、夜間の収縮期血圧上昇が、OSAと独立した関連因子となった。

ゆみのコメント:
Muxfuldtらは、治療抵抗性高血圧患者において中等度以上のOSAをもつ患者が半数以上いたという報告を大規模コホート研究より示した。横断研究のため、それぞれの因果関係については言及できないが、降圧剤でコントロール不良の高血圧症例において、高齢男性の肥満症例、また24時間血圧測定において夜間の血圧が下がらない、non-dipper typeの症例はOSAの関与を強く疑うことができるという臨床上意義のある研究報告と考える。

引用文献:Muxfeldt ES et al. Prevalence and associated factors of obstructive sleep apnea in patients with resistant hypertension. Am J Hypertens.2014;27:1069-78

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2014年4月21日 月曜日

女性の睡眠時無呼吸症と脳・心血管疾患発症との関連

女性の閉塞性睡眠時無呼吸が脳・心血管系疾患発症の
リスクファクターとなるかはいまだ明らかではない。 
Campos-Rodriguezらは、前向き観察研究において、女性の無呼吸症患者の脳梗塞や冠動脈疾患の発症との関連性を検討した。
無呼吸低呼吸指数(AHI)10回/時間未満をコントロール群とし、10回/時間以上を無呼吸症と判断し、
1日4時間以上CPAP使用している群をCPAP治療群、4時間未満のCPAP使用を非治療群と定義した。
967人の無呼吸症が疑われた女性を平均6.8年観察したところ、コントロール群と比較して、非治療無呼吸症群は有意に脳・心血管イベントを発症していた。多変量解析においても、非治療無呼吸症群は有意に脳・心血管イベントを発症し、またCPAP治療群はイベント抑制の傾向を認めていた。女性の睡眠時無呼吸症と発症疾患の内容を更に分析したところ、特に脳梗塞の発症と強い関連性を示していた。

ゆみのコメント:
これまでの報告では、男性において睡眠時無呼吸症と脳心血管系疾患との関連性を認めていたが、女性だけを対象とした観察研究の報告はなかった。一般人口での睡眠時無呼吸症罹患の男女比は2:1と言われているが、実際に睡眠クリニックを受診する男女比は8:2であり、女性の受診率が低いことが言われている。女性においては、日常的に睡眠時無呼吸症に伴う諸症状が困ってないこと、また臨床的に検査や治療意義を示す報告が十分でなかったことが一因と考えられる。
本研究により、女性で無呼吸症をもつことが生活活動度を低下させる脳梗塞や冠動脈疾患発症と関連することが明らかになり、女性の睡眠時無呼吸症のスクリーニングや治療の意義を示すことができる。

引用文献:Campos-Rodriquez F et al. Role of Sleep Apnea and CPAP therapy in the incidence of stroke or coronary heart disease in women. Am J Respir Crit Care Med. 2014 (in press)

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2014年4月14日 月曜日

睡眠中の周期性四肢運動障害と心不全の死亡リスク

周期性四肢運動は睡眠中に定期的な脚の運動を繰り返すのが特徴の疾患である。健常人と比較して、高齢や心不全患者に多いことが言われているが、その臨床的な意義は不明でああった。
Yuminoらは、218人の終夜睡眠ポリソムノグラム検査を行った慢性心不全患者を前向きに観察し、周期性四肢運動障害と死亡リスクとの関連性を検討した。心不全患者のうち37%で1時間あたりの周期性四肢運動が5回以上(周期性四肢運動障害)を認めた。周期性四肢運動障害の有無で平均33ヶ月観察したところ、障害をもつ患者がもたない患者と比較して、有意に死亡リスクが高いことが分かった。多変量解析にて、年齢や左室収縮能などの関連因子の存在を除外したとしても、心不全患者において、周期性四肢運動障害が独立して死亡リスクと関係していた。

ゆみのコメント:
周期性四肢運動障害と死亡リスクの関連性を示したはじめての報告である。
周期性四肢運動障害は、「Playing football during sleep, 睡眠中のサッカープレイ」とも言われ、周期的に足を蹴飛ばすような動きをする疾患である。蹴るような行動だけでなく、脚先をぴくぴくさせたり、ねじるような動きをしたり、その様子は様々である。
1時間あたりの回数を重症度指数とし、本研究では5回/時間以上を周期性四肢運動障害と定義づけ、心不全患者の1/3以上と高頻度に認め、これが死亡リスクとも関係していることを報告している。睡眠中に起こる繰り返す低酸素や覚醒反応を認める睡眠時無呼吸症はその病態自体が心不全を悪化させることが知られている睡眠中の病気であり、その因果関係も少しずつ明らかになっている。しかしながら、周期性四肢運動障害はそれ自体が心不全を悪化させるか、また心不全の単なる予後予測因子であるかはいまだ明らかになっていない。いずれにせよ、心不全患者にとって夜間睡眠中の出来事を観察することは、その病態や病状把握のために有用であり、患者の生活の質の向上、予後の改善のため、多角的に「treatable factor:治療可能な関連因子」を探索することは重要と考える。

引用文献:Yumino D et al. Relation of periodic leg movements during sleep and mortality in patients with systolic heart failure. Am J Cardiol 2011;107:447-51.

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