院長ブログ

2014年2月16日 日曜日

高齢者女性の認知機能低下に睡眠時無呼吸が関係する

夜間の繰り返す低酸素や睡眠からの脳波上の覚醒反応が、高齢者における認知機能低下と関係しているかどうかは明らかではなかった。
Yaffeらは、認知症のない298人の高齢者女性(平均82歳)に終夜睡眠ポリソムノグラム検査を行い、無呼吸低呼吸指数(AHI)15以上を無呼吸症と診断したところ、105人(35%)が無呼吸症を持っていた。これらの患者を約5年間観察し、どのような症例が認知機能低下と関連しているかを検討した。結果は、無呼吸症がない群は31%、無呼吸症のあった群は45%で認知症に発展した。そして認知症になるリスクを多変量解析で検討したところ、夜間の低酸素や無呼吸低呼吸の頻度が高いほど認知機能低下に発展しやすかった。

ゆみのコメント:
高齢者女性において、夜間の繰り返す無呼吸が認知機能低下のリスクとなることが明らかになった。本研究により、高齢者の睡眠時無呼吸症への継続治療の必要性において、ひとつの重要な意義を示すことができる。しかしながら、本研究は女性を対象としており、男性においてはいまだ明らかではない。また睡眠時無呼吸症への治療介入により、認知機能低下の予防となるかは明らかではない。このため、睡眠時無呼吸症と認知症の関係について、今後の更なる研究が必要である。
この研究結果から、超高齢社会をむかえた本邦において、高齢者の認知症の一次予防として、睡眠時無呼吸症の存在を念頭おきながら、一般診療を行うことも必要と考える。

引用文献:Yaffe K et al. Sleep disordered breathing, hypoxia, and risk of mild cognitive impairment and dementia in older women. JAMA. 2011; 306: 613-9

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2014年2月 9日 日曜日

SAS患者のメタボリックシンドロームへのCPAPの効果

睡眠時無呼吸症はメタボリックシンドロームと関係があることが言われている。しかしながら、そのCPAPへの効果はいまだ明らかになっていない。
Sharmaらは、3か月間のCPAP群とコントロール群の血圧や脂質、血糖、メタボリックシンドロームへの効果を検討した。86人の睡眠時無呼吸症患者のうち、75人(87%)がメタボリックシンドロームを持っていた。3カ月のCPAP治療により、肥満度は軽度の低下(-0.37kg)にも関わらず、収縮期血圧が3.9mmHg低下、LDLコレステロール9.6mg/dl低下、中性脂肪18.7mg/dl低下、HbA1c 0.2%低下、メタボリックシンドロームは11/86(13%)の人が改善を認めた。また皮下脂肪や内臓脂肪に関しても有意な改善を認めた。

ゆみのコメント:
睡眠時無呼吸症への3カ月のCPAP治療により、血圧や皮下脂肪、メタボリック症候群の改善を認めた。この結果は、睡眠時無呼吸症自体が血圧や脂質、メタボリック症候群のひとつの原因となる可能性を示す。しかしながら、本研究はインド人、平均BMI 33と超肥満症例を対象としており、肥満度の低い日本人の睡眠時無呼吸症患者への効果はいまだ明らかではない。 
この研究結果は睡眠時無呼吸症患者全員にあてはまるものではないが、臨床医として夜間のいびき、無呼吸の存在を考え、高血圧やメタボリック症候群をもつ患者へ、降圧剤やスタチンなどの薬物治療だけでなく多角的なアプローチが必要と考える。

引用文献:Sharma SK et al. CPAP for the Metabolic Syndrome in Patients with Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med 2011;365:2277-86.

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2014年2月 2日 日曜日

子供の睡眠時無呼吸へのアデノイド摘出手術の効果

就学期の子供のいびき、睡眠時無呼吸症の原因の多くはアデノイドにあり、その治療にアデノイド口蓋扁桃摘出手術が行われている。しかしながら、その有効性についてはいまだ明らかになっていない。
Marcusらは、睡眠時無呼吸症をもつ5-9歳の就学期の子供464人を対象に、早期の手術治療群と同治療待機群を無作為に分け、7か月後の実行機能(注意や行動を制御する能力)や生活の質、また無呼吸の重症度の変化について検討した。実行機能については両群間で有意な差がなかったが、認知機能、生活の質や睡眠時無呼吸症の重症度は、早期の外科的治療群が治療待機群と比べて有意な改善を認めた。また肥満群は非肥満群と比べて同等の治療効果を認めた。尚、7か月間の観察において、無呼吸症の重症度は外科治療群で76%、治療待機群では46%の子供で改善を認めている。

ゆみのコメント: 
子供の無呼吸症は、睡眠中の成長ホルモン分泌低下から身体面や精神面での発達の遅れを認め、また集中力が低下しているため学習意欲の低下などを起こすことがあります。
いびきや無呼吸を認め、身体面や精神面の著しい低下を認める子供にはこれまでどおり積極的な摘出手術を考慮しても良いと考えるが、本研究の観察期間7カ月において、約半数が自然経過にて無呼吸症の軽快を認め、また同手術により実行機能という点においては明らかな改善を認めていないことからも、客観的に日常生活に支障がないと考えられる子供へのアデノイド摘出術は、慎重に検討する必要があります。

引用文献:Marcus CL et al. A Randomized Trial of Adenotonsillectomy for Childhood Sleep Apnea. N Engl J Med. 2013; 368: 2366-2376

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2014年1月26日 日曜日

睡眠時無呼吸症を合併している心不全へのASVの効果

心不全患者の約半数に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(CSA)が併存している。在宅人工呼吸機器であるASVは、CSAへの効果はこれまでの研究で示されていたが、OSAとCSAが併存する無呼吸に対しての効果はまだ明らかになっていない。
Randerathらは、OSAとCSAが併存する17人の心不全患者に対して、CPAPとASV (BiPAP autoSV)を12か月間使用して、心不全の状態を比較検討した。ASVはCPAPと比較して、有意にCSAおよびBNPを低下させた。CPAPとASVは、息切れや疲労の自覚症状を改善させたが、両群間では有意な違いを認めなかった。尚、両群間で夜間に4時間以上している割合は有意な違いは認めなかった(CPAP, 4.3 ± 2.3 h/d; ASV, 5.2 ± 2.0 h/d)。
 
ゆみのコメント:
心不全の多角的治療のひとつとして、増悪因子である無呼吸症への積極的な治療介入を行い、長期観察を行った研究である。陽圧呼吸であるCPAPおよびASVは、心不全に良い効果をもたらす。問題となるのは、これらの治療がどれだけ睡眠中に継続使用ができるかである。
CPAPに比較して、ASVは呼吸に合わせた陽圧呼吸を行うことにより、呼吸の不安定性の是正、治療の継続率が高いことが、心不全への良い影響をもたらしていると考える。

引用文献:Randerath WJ et al. Long-term auto-servoventilation or constant positive pressure in heart failure and coexisting central with obstructive sleep apnea. Chest. 2012;142:440-7. 

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2014年1月19日 日曜日

心不全患者における睡眠時無呼吸の心拍出量への影響

睡眠時無呼吸症には、上気道を閉塞する閉塞型睡眠時無呼吸と脳から中枢性に呼吸を停止させる中枢型睡眠時無呼吸の2つのタイプがある。
閉塞型パターンは胸腔内圧の変動をきたし、心臓に負担をかけやすい状況になるが、中枢型パターンは胸腔内圧の変動がないため、心臓には直接的な影響を及ぼさない可能性をもつ。しかしながら、これらを直接的に示した研究はこれまでない。
Yuminoらは、40人の夜間の睡眠ポリソムノグラム検査と同時に非侵襲的心拍出量モニタリングを行い、400回の無呼吸パターンの心拍出量の変化を検討した。その結果、閉塞型パターンは無呼吸中に心拍出量が平均6.8%低下し、一方で中枢型パターンは平均2.6%増加していた。また閉塞型パターンの無呼吸において、どのような患者に心拍出量がより低くなるかを多変量解析にて検討したところ、左室駆出率が低下している症例、無呼吸時間が長い症例、また無呼吸により酸素濃度が低下している症例であることが分かった。

ゆみのコメント:
心不全患者において、上気道が閉塞する閉塞型睡眠時無呼吸が心拍出量を低下させることをヒトで直接的に示したはじめての研究である。この研究結果は、心不全に合併した睡眠時無呼吸への治療意義を示し、また特にどのような患者へ積極的に陽圧呼吸療法の治療導入、そして継続させるかを示す有意義な研究と考える。

引用文献:Yumino D et al. Differing effects of obstructive and central sleep apneas on stroke volume in patients with heart failure. Am J Respir Crit Care Med. 2013;187:433-8

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